第五話 『試験』
次の日の朝、オレは疑問を親父にぶつけた

ジジイは『選ばれた人』だけが全属性を使えるって言ってたはずだが

「ナチュラルファームに行けばみんな全属性を使えるわけなの?」

コレがオレの疑問だ。選ばれちゃった意味が無くなるんじゃないか?

しかし、

「いや、一般の人はいくら試験を受けようと二つまでしか属性を覚えれない」
ということで、

「選ばれた人だけ、全ての属性を取得できるわけだ」
ってことらしい。
それじゃ、もう一つ

「んじゃあさ、弟はどこに居るんだ?」
オレだけ親父のところに送られたわけか?

「弟は……爺さんのところだ。オレはお前の師になって、爺さんはお前の弟の師になるってわけだな」
ってことらしい。いや、待て

「え?ってことは、弟は空間を操作できるようになるわけ?!オレも空間操作したい!」
子供が駄々こねるような感じだが、空間操作は便利だ

「空間の操作なんて誰でもできるもんじゃあないぞ?俺だってできん。弟も多分出来ないだろうな」

「お父様がどれだけ強いのか知らないのでございますが?」
弟の才能のほうが気になるが

「ほう……舐めてるな?少し勝負してやるか」
ってことになり、丸太から出てすぐ近くの森で稽古付けてもらうことに。



「ふん。どこからでもかかって来い」
と、舐めた口調で挑発する親父

「油断大敵!」
風を呼び出し、親父のほうに砂煙を吹き飛ばす。が

「ハッハッハ、口ほどにもないな。クズ」
と親父は馬鹿にする。

「さっきからふざけやがっ……」
後ろからカトリーナ級のハリケーンを呼び出した親父を見たのが最後だった……








……。

どうやら親父に一瞬でやられて気絶していたようだ。

辺りを見回すと、カウンターがいくつか置いてある建物らしい。

カウンターの一つに親父が座っており、

オレに気づいて、コッチに向かってくる。


「スマンスマン。あれでも加減はしたんだけどなぁ……。予想以上にお前は弱すぎた」
と言いおわったあと、ガハハハハと笑い出す。まだ強いのか……。親父に対しての偏見が消えた気がする

「いや……、この世界の人はみんなこんなに強いの?」
やんなっちゃうよね

「オレはこの世界の中で一番の風使いだからな。一般人の属性は世界に影響を及ぼすほど
強くは無い。頑張って微風を吹かすぐらいか」
ってことは……。親父に対しての偏見が完璧に消える。

「でさ、ここはどこ?」
最近は何でもかんでも知らない所ばっかりだ。

「ここが、ナチュラルファーム。自然を育てる場所だ」

「自然を育てる……?」
疑問をぶつけると

「属性っていうのはな、ゲームに出てくる魔法の類じゃないんだ。
自然のもの、それに似るものなどを作り出せるようになるわけだ」

「ようするに、風、火、水、雷、土、光、まぁ、他にも何種類かあるが、そんなものを作り出せる」

「一般人じゃあ一つから二つまでしか使えない属性を、お前は全部使えるわけだ。理解できたか?」

「理解できました。先生」
何とか理解できる。身の回りの属性って奴を使えるわけだな

「分かるだろうが、そういう自然を作れる人を育てるからナチュラルファームっていう名前なだけだ」
ということらしい。いい名前とは思えんが


「そういえば……」

「そういえばさ、属性を取得するには試験を受けないといけないんだよね?」

「あぁ、そうだが」
それぐらいも忘れたのか?と言いたそうな目で見られるが

「どこで受けるわけ?」

「あぁ、いい忘れてたな。まずは雷属性でいいか……」


一通り説明されたが

この病院を思わせる建物は当然だがいくつか部屋があり、
試験部屋にいけば試験を受けさせてくれるとの事らしい。

オレは父の案内で雷属性の試験部屋前に来たわけだが

「まぁ、殺されはしないだろうが、体には気を付けろよ」
と言ったあと

「オレは風属性の試験官だからな、いつまでも付いてやれないんだよ」
とのことらしい。探偵は?


そっとドアを開け、中に入ると、普通の部屋が現れた。当然か

「あ、よろしくお願いします」
と人の良さそうな人が歩み寄ってくる。

「君が選ばれた人ですね?!話は聞いてますよ」
あれ?こんなバレてたら殺されない?

「ナチュラルファームはこの世界を維持する会社のようなものですから、安心してください」
とのことだ。ってことは、試験官の人たちは皆いい人らしい。無論、親父もだ

「そうですか、安心しました」
と、念のため敬語で会話をする。

「……それでは、試験のほうを始めましょうか」

ゴクリ……。生つばゴックンし、緊張とワクワク感で頭がパンクしそうだ

「試験の内容は……」

おいおい、間開けすぎだろ、焦らすなよ……

「試験官のほうから聞いてください」

と言ったあと、

「それでは、コチラのドアにお入りください」
と、その試験官モドキが道を開け、ドアに入れ。と言ってくる。

「は……はぁ」
と、呆気に取られる

そして、試験官モドキ……、知らない人が見ている前なので、堂々と

ドアを開けると

「待っておったよ」

と言い、頭の禿げている爺さんが姿を現した。

「ほっほ、マルタから話は聞いておるよ、お主が選ばれた人じゃの?」
何ていうお爺さん口調なんだ?

「えぇ、そうですが……」
やっぱり皆知ってるみたいだ

「選ばれた人……と言っても才能は無いようじゃのう」
何?!

「マルタと戦った時の事、聞いたぞ。砂煙を撒くことしか出来んようじゃのう」
と、言ったあとにニヤニヤしだす。

「才能が全てじゃない。とだけ言わせてもらいましょうか」
強気になる。一応、選ばれちゃってるんですから

「まぁ、大丈夫じゃ。風は元々攻撃的なものじゃあないからのう」

「では、そろそろ本題に入るとしようかな。試験の内容じゃが……」

「ワシにジャンケンで勝つのが条件にするかのう」

……。

どいつもこいつも舐めやがって!!

「そんな簡単な条件でいいの?」
一応確認を取る

「お主がワシと戦って勝てると思っているのか?」

「ふ、爺さん?」

「ごもっともなお答えですね。お言葉に甘えさせてもらいましょうか」

とカッコつけながらかっこ悪いことを言うオレだった。

「ただ、ジャンケンして勝てばいいわけですね?」
もう一度確認をする。几帳面です

「そう、ただジャンケンに勝つだけじゃ……」

「ジャンケン中に邪魔をしたりするのも、ありじゃ。お主は何でもあり。ワシはただジャンケンするのみ。
勿論、ジャンケングー!とか言って殴ったりもせんから安心せい」
ということらしい。オレは攻撃あり。試験官さんは妨害無しってことらしい

「それなら、何とかなりそうですねぇ……。本気出しますよ!」

「ジャン、ケン!!……」

想像を絶する過酷なジャンケン大会の幕開けだった