第四話 『センスの無い家』
この街と地球の街の大きな違い、それは予想以上に少なかった。

違いは何か?それは、車が浮いていること、車の下の道路には自転車、バイク、徒歩者

がいる。など、それぐらいか。

電車も浮いてないのか?と考えたりもしたが、電車が空中を走ってたら

テロに襲われたりしてみろ。まさに暴走列車。人を轢き殺す地獄の産物となる。



ちなみに、オレは今本屋さんに居ます。何をしてるかって?勿論地図を買いに来たんだが……

本当に地球と変わらない。どういうことだ?と思いながら本をレジに出し金を出……

金……?

金ェェェェーーーーッ!!

糞親父ッ!糞ジジイ!何でお前らは金を渡さない?!

どっと噴き出る汗。レジの人に対して恥ずかしさに出る冷や汗と

モワモワと暑いイライラして出る汗とが同時に出る。オレって凄いかも

そう感じながらも

「あ、スイマセン。金無かったんで……」
と軽く謝ると

「あ、そう。そんなことだろうとは思ってたけどねェ」
なーんてニヤニヤした態度で追っ払われる。殴りてェ……。

恥ずかしさは無くなり、オレの中には苛立ちしか無くなっていたが、

流石にアレだから自分を制した……。

本屋を出、

「それにしても……」

それにしても、オレは何をしているんだろうか。

父は『マルタ』で待っているようだが、正直

始めてきた街でいきなり『ハチ公前集合ね』って言われるようなもんだ。まぁ、ハチ公は楽だが。

『マルタ』何ていう暗号まがいなものをヒントにされるとどうしようもない。

まぁ、考えてみるか。

『マルタ』ってことは丸太の可能性もあるわけだが、丸太?何それって感じだよな。

丸い田んぼってのも無いな。丸い田んぼ自体存在するのかが分からないし……。

まぁ、今の状態じゃあ何も分からないな。

行くあても無いし、歩くか。父も街を拝見しとけって言ってたっけ。

そんなわけでオレはこの街……繁華街をうろつくことになったわけですが、

やっぱり地図が欲しい。少しでも代わりになるものが欲しい。ってわけで

観光用のパンフレットを貰い、ベンチに寝そべって見ると……。

……!!

……おいおい、コレはおかしいだろ。

パンフレットにはこう書かれていた

『この街の名物!お悩み事は何でもござれ!』

と、デカデカと書かれており、その下に

『この街のマスコット的建物であり、何でも暴く有名な探偵、マルタが務めている探偵社!
ご観光の方も、お悩みの方でもどんな方でもよろしいです。是非見物に来てください』

…。

というわけで、丁寧に記されている地図を見ながら道を辿り、行き着いた場所にある建物は……。

「丸田だ……。」

そこには馬鹿でかい。いや、家三件分ほどの大きさの丸田がドスンと置いてあるだけのようにも見える。

オレは丸田の真ん中に見える扉に入ると

「おぉ、案外早かったな!街をちゃんと見回したか?」
と大声で言いながら歩み寄ってくる。

「えぇー、私は有名な探偵のマルタさんを拝見しに来たんですが?」
とぼけた口調で訊ねると

「あぁ、マルタね。それがオレの本名だ」

へー、親父が名探偵ねぇ……親父が?

「こんな五月蝿い親父が名探偵?」
まぁ、こう思うのが当たり前だ。それどころか、名探偵ですら無い気もする。

「何でさ」

「何でこんな大きな丸太の中に事務所なんて作って一人で働いてるの?」
コレも当たり前だ。家三件分ほどの広い家?で一人で働いてるのかが問題

「あぁ、別にな」

「お前が助手になれば、百人力だ。なーんてな」
と言ったあとにガハハハハと笑いだす。

「お前を助手にするってのは本当。百人力は嘘だ」
ちょっと待て、百人力は嘘ってのはどうでもいいが

「オレが助手になるとでも思ってるのか?」
コレだけは言わせていただきたい。

「言わせてもらうが、お前の働き次第で給料を渡すし、何よりお前の家はこの丸太だ」
家なんですって。この丸太が。

「給料…か。オレが頑張れば頑張るほど給料は増えるってこと?」
世の中金。場合によっては断る。

「あぁ。さっきも言ったとおり、お前の働き次第で増えたり減ったり……だ。お前が何もしなかったら
一ヶ月五百円しか渡さない。まぁ、頑張れば何百万か渡す」
五百円から何百万……か。何だこの差は

「ま……まぁ、働く場所探すのも面倒だし、オレは仕事頑張るし?働いてやってもいいが」

「電気代とか飯代とかは出してくれよ?」

「それは、当然だろう。俺一人でも月数億稼いで……いや、金に余裕があるからな。払ってやる」
数億……。言い直したし、聞かなかったことにしてやる……わけが無い

「ってことは、オレは頑張れば月で三百万は硬いかな?」
と給料のアップを軽く狙うと

「何いってるんだ?オレは名探偵。お前はこの世界ですら始めてきたんだ。そう簡単に稼げるとでも思ってるのか?」
確かにこの世界に来たばかりだったが……何せ、初めてきたわけじゃあないしな。覚えてないけど

「そういえば……仕事ってどんなことするの?」
コレは聞かないとね

「あぁ、仕事……。は今のお前じゃあ無理だ。助手も当分先」

「はぁ?!」
給料の話とかして期待させやがって!

「覚えてるか?属性のこと」

「一応」

「お前には先に属性の入手に行ってもらおう」

「入手……属性の?」
そういえばジジイも親父に聞けって言ってたな

「あぁ。属性の入手方法は……」


街の端のほうにある『ナチュラルファーム』という建物で試験があるそうだ。
その試験は属性ごとに分かれていて、受ける資格は何らかの属性、一つ以上を身に着けていること。
つまり、普通の地球人なら資格は無いが、弟みたいな稀なタイプは資格があるってことだ。

と一通り説明された

「試験の内容は……」

「審査員がお前を見て内容を決める」

「だから、受験のように勉強したって意味が無いわけだ」

なるほど……オラなんだかすっげぇワクワクしてきたぞ!

「今から行っていいの?っていうか行きたい」

「行ってもいいが、朝の十時から夜の八時までしか空いて無いぞ」
とのことで

「今は五時……か」
ナチュラルファームって遠いのかな

「試験中に八時を超えたら自動的に最初からになるからな。今日は行っても意味が無いな」

「明日にしとけ」
と言いおわったあと、ガハハハハと笑う。クールになっていた親父がホットに戻る瞬間だった。

「今日は蜘蛛退治も頑張ったし、気づいてないと思うが、体は結構堪えているだろう」
と言い

「今日のところはシャワー浴びて、飯食って、さっさと寝とけ。飯は用意してある」
と言ったあとに緑色の風を呼び出し、『ガチャリ』とドアを開ける音が聞こえる。

「二階の一室の部屋を開けといたから、そこの部屋を使え。ベッドも用意してるしな」

「あ、飯は作っとくからシャワー浴びとけ」

というと、別の部屋に入っていき、料理を作り出したようだ。


今日は蜘蛛退治、別の世界に落ちた直後に変な空間に入れられたりと、

色々あった。

だが、地球にいた頃のように学校に通い、蜘蛛退治するだけの毎日から

離れられ、今からこの世界で楽しいことが待っている予感があった。

オレは心底ワクワクしながら明日の試験に備えて今日は休むことにした。

……


壮絶な試験があることも知らずに